ハラジョーな人生|1978年〜

 

(語り、仲谷公司)

 

特に、自分が特別だと思ったことはありません。

ただ、振り返ってみるとほんの少しだけ、楽天的だったかもしれません。

 

高校を卒業して専門学校に行きました。

歯科技工士の資格を取ったのです。深い意味はありません。

歯医者さんはお金持ちが多い。

だから、そういう関係の仕事に就けば儲かると思ったからです。

でも、ある歯医者さんに言われてしまいました。

 

「歯医者も技工士もしっかり勉強しないとだめだよ」と。

もっと勉強が必要だと感じた私は、専修科過程(すでに免許を持っている人が集まる講座)

にまで進みました。 

でも、どうやら技術だけでは食べていけない世界みたいで、世渡りも重要。

でも私は、そんな世渡り上手じゃありません。

 

そんな時、講習会の話に興味を持ちました。

歯医者さんや歯科技工士向けの講習会があるのですが、それは例えば

『1回の授業料3万円。1コース10回の授業。定員30名』というモノでした。

1回3万円、10回で30万円、30人で900万円…こりゃオイシイ!と思ったのですが、

権威ある有名な先生じゃないと生徒は集まらないそうです。

あいにく私は無名の男です。きっと生徒は集まらない。

そこで、私は思ったのです。有名になればいいのだ、と。

 

私は、技術ノウハウを盗むために、業界では有名な先生の所へ押しかけました。

「給料はいらないから雇ってくれ」。

雇ってくれたのはいいのですが、

残念なことに、本当に給料は貰えませんでした。

でも、しょうがありません。

これもカリスマになるための厳しい修行だと思い、頑張りました。

 

1年後、私はカリスマになることは諦めました。

カリスマは、努力してなれるものではないのですね。

 

その後、母校に舞い戻りました。

歯科業界紙への投稿などの仕事に携わり、

そこで材料や技術の記事を書く日々を送ることにしたのです。