2014年6月号Vol.24
こんにちは、サクライです。このまえ食中毒にかかりました。食中毒の症状は有名ですから、改めてここで述べる必要はないでしょう。食中毒にかかったら辛いのも汚いのも皆おなじ。ちゃんと快復したのだから御の字です。
ただ、つくづく悲しかったのは部屋の惨状。一人暮らしってツライなぁと泣けてきました。誰もご飯なんて作ってくれません。布団から手を伸ばして届く範囲に、アクエリアスのボトルやウィダーインゼリーが、中身がある物ない物とりまぜて散乱しています。
だらだら汗をかいても、なかなかパジャマを取り変える気力はわきません。汗かいて、冷えて、乾いて、また汗かいて…の繰り返しです。私はどんどん臭くなっていきます。自分の臭いに耐えきれなくなってついにパジャマを着替えても、脱いだものを洗濯する力はありません。袖や裾がベロンと裏返しになったまま床に放置されているパジャマや下着には何ともやりきれない哀愁が漂います。
さて、伏せっている間はずっと本を読んでいました。本は寝床でもトイレでも読めるので(しょっちゅう中断を余儀なくされるとはいえ)食中毒の間は重宝します。更にラッキーな事に、食中毒にかかる2日前、私はいろんな作家さんのいろんなジャンルの本を購入していました(太宰治の随筆、村上春樹の小説、北尾トロのルポタージュ、他多数)。これなら読み続けても飽きない!二日前の自分よ、ファインプレーだ!!こういう事は嬉しいですね。日頃の行いが良いからですかね。日頃の行いがもっと良ければ、食中毒にもかからなかったかもしれません。
その本の中に、江國香織さんの「冷静と情熱のあいだ」がありました。
ご存知、15年ほど前に大ヒットした恋愛小説です。コレがもう腹が立って腹が立って。本の中の人物に腹が立ったのは久しぶりです。
主人公はミラノに住む日本人女性あおい。マーヴという実業家に見初められ、彼の高級マンションで同棲しています。マーヴに「僕のテゾーロ(宝物)」と呼ばれてめちゃめちゃ大切にされていますが、彼女は大学時代の恋人が忘れられません。「元彼以外、私は誰にも心を開けない…。」
美しい街ミラノで、高級住宅に住み、美味しい物を食べて、恋人が買ってくれた肌触りの良いルームウェアを着て、その下には香水を振りかけた下着を身につけて、毎日ボーッと風呂に入って、それでも憂いを振りまくあおい。おい、ふざけるな。
こちとら風呂にも入れず、固形物が食べられず、臭いパジャマと下着を着て、六畳の和室で一人で寝てるんだ。
美しく健康で裕福なあおいよ、お前は何が不満なんだ?下着に香水って何だよ?笑っちゃうよ。
彼女と私の落差に思わず笑い出してしまいました。暗くて臭くて菌が蔓延している六畳部屋で一人で爆笑している自分がおかしくて、更に笑いに拍車がかかり、最後は涙まで流していました。いま思うとコワイ…。
言うまでもない事ですが、この小説が悪いわけではありません。名作だから大ヒットしたのでしょう。ただ、食中毒の私には受け入れられなかっただけです。普段は江國香織さんの小説は好きです。
今後しばらく食中毒リスクが高い時期が続きます。皆様もどうぞお気を付けください。
「下着に香水を振りかけてみようかなぁ」と思いつつ、未だできていないサクライでした。