2018年11月Vol.77 サクッと小噺

※小噺は過去分を随時アップしております。内容に時差がある場合もありますが、是非ご覧ください。
※スタッフの名前がニックネームに変わりました。

 

こんにちは、サクです。
突然ですが、あなたには兄弟姉妹がいますか? 私には3才下の妹がいます。サク家は両親が学生結婚でお金がなかったため、玩具が乏しく、かわりに私達は想像力を駆使して遊んでいました。

いろんな遊びを開発しましたが、手軽なのは「即興物語」です。交互に口述でストーリーを作ります。どちらかが「やりたい」と思った瞬間に始まるので、いつどこで始まるか分かりません。

  妹 「でね、おばあちゃんが福島から桃おくってくれるって…」
  私 「むか~しむかし、鬼退治を経て英雄となった桃太郎は、
         3人の息子をもうけました」
  妹 「?! えっと、柿太郎、梨次郎、苺三郎です。
     苺三郎は男だけど女の子になりたくて…」

このように、どちらか1人が始めると、もう1人が慌てて続けます。打合せナシ!待ったナシ!それぞれの意図が交互に入ってくるので、筋道の通った物語ができる事はめったにありません。たとえばラブストーリーの場合、私は悲恋にしたいのに、妹がハッピーエンドを狙っていると、やたらと別れたりくっついたりを繰り返す、情緒不安定なカップルの話になってしまいます。

 

そんな訳でほとんどが失敗作に終わるのですが、傑作ができかけた事があります。たしか私が小学6年生、妹が3年生。創作場所はお風呂でした。登場人物は「爺さんと鷲」です。

 

 

爺さんと鷲の友情がはじまります。爺さんは、人間に住処を奪われる鷲を助けて、鷲は、妻に先立たれた爺さんの孤独を癒します。村には秘密にして、2人は親愛の情を深めていきます。しかしある日、鷲がよその家の罠にかかってしまいました。村人達に囲まれ、銃を突きつけられて、最期を覚悟する鷲―。
もう私も妹も号泣です。

 

  私「そこに爺さんが飛び込んできました!」
  妹「やめろー! 鷲を撃つなら、ワシを撃て!!!」
   (泣きながら腕をバッと広げる熱演)

ここにきて、まさかのダジャレ。
私達の涙はあっという間に乾きました。

   私「…鷲に名前つけときゃよかったね」
   妹「そうだね…。てゆーか、鷹でもよかったのに、
     鷲にしたことが悔やまれる」

ここまで全力で語ってきたので、緊張の糸が切れてしまったら、やり直す余力はありません。私達は脱力したまま、黙って体を洗って、浴室をあとにしました。

「鷲に名前つけときゃよかった」「鷹にしときゃよかった」は、
今でも妹とよく話しています。
オシかったなぁ。

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