2019年5月Vol.83 サクッと小噺

※小噺は過去分を随時アップしております。内容に時差がある場合もありますが、是非ご覧ください。
※スタッフの名前がニックネームに変わりました。

 

こんにちは、サクです。

突然ですが、世界で最も難しい言語って何だと思いますか?
6ヶ国語を話す友人いわく「まちがいなく日本語」だそうです(ちなみに彼の母語はフランス語とアラビア語)。私はカナダの大学に通っていたのですが、そこでは日本語の授業が開講されていました(もちろん私は受講不可)。教授が授業を行い(週3回)、私はアルバイトとしてワークショップを任されていました(週1回)。ワークショップでは、学生達とカンタンな日本語で話したり、彼らの課題を手伝ったりします。
さて、ある日のワークショップで、日本語の教科書にこんな一文が出てきました。

 

この一文から分かるとおり、彼らは平仮名とカタカナは習得済ですが、漢字はまだです。難なく読めるだろうと思いきや、彼らに混乱が生じました。「ぎゅうにゅうと?」「What’s ぎゅうにゅうと?!」全員の視線が、もっとも賢い学生のピーターに集まります。しかしピーターも眉をひそめて、「ぎゅうにゅうと、ぎゅうにゅうと、ぎゅうにゅうと・・・?」と唱えながら記憶をたどるばかり。

 

サク  「教科書のミスだ。
     正しくは、“ぎゅうにゅう”と“と”の間にスペースが必要」
学 生  「Oh~!So, it  means  MILK  AND…!」

 

“ぎゅうにゅう と” なら単語を識別できるので、学生達はすぐ理解できます。彼らは納得して、しばらくは楽しそうに課題に取り組んでいましたが、1人がふと思いついたように質問してきました。

 

学 生  「念のため聞くけど、
     本物の日本語の文章では、単語の間にスペースあるよね?」
サク   「・・・無い」

 

彼らはふたたび大パニック。
「じゃあ日本語を読めるようになるなんて不可能だ!」と大いに嘆きます。
たしかに、すべて平仮名でスペースが無ければ読みにくいでしょう(わたしはぎゅうにゅうとぱんとさらだをたべました)。しかし、日本語は平仮名/カタカナ/漢字を使い分けます(私は牛乳とパンとサラダを食べました)。だからスペースが無くても難なく読めるのです。

 

サク  (上記を説明して)「だから大丈夫だよ!」
学 生  「だったら日本語も単語の間にスペースいれて、カタカナと漢字やめろよ!!!」

 

 

もうブーイングが止まりません。そう言われてみれば、たしかに日本語は難しい。まず平仮名46字、そしてカタカナ46字を覚えて、そのあと無限数の漢字が襲ってきます。学びの最初の壁が高すぎます
(英語なら26字で済むのに)。しかし身に付けてしまえば、その後の活用は無限大。平仮名/カタカナ/漢字のどれを使うかによって、微妙にニュアンスを変えることもできます(例:かわいい/カワイイ/可愛い)。しかし、50音を覚えたばかりの彼らにとっては途方も無い話です。この日のワークショップは、ひたすら文句を言う者、すっかり意気消沈する者が続出して、これ以上は授業になりませんでした(苦笑)。

日本で生まれ育った私にとって、彼らとのワークショップは新鮮な驚きに満ちていました。「日本語ってそうだったんだ?!」と彼らから学ぶことが沢山あって、とても面白かったです。それらについてはまた次の機会に書けたらと思います。

 

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