2019年11月Vol.86 サクッと小噺

※小噺は過去分を随時アップしております。内容に時差がある場合もありますが、是非ご覧ください。
※スタッフの名前がニックネームに変わりました。

 

先日、3つ下の妹が誕生日を迎え、最後の20代Yearに突入しました。
29才になっても「もうアラサーだから・いい歳だから」といった発言はなく、「50才までは可愛い綺麗とみんなからチヤホヤされて生きたい」と言う妹は、流石というか何というか・・・まぁ彼女なら成し遂げるような気もします。そういえば、私が人生で初めて可愛がった相手も妹でした。

 

妹が生まれた時、私は3才でした。私は彼女の誕生前から名前を考え(私はミユキを提案しましたが、母の希望により妹はユキと名付けられました)、一緒に遊ぶ予定のおもちゃをティッシュで拭き拭きしながら誕生に備え(私なりに掃除しているつもりでした)、生まれてからは妹にやたらとちょっかいを出していました。

 

 「ユキちゃん、絵本読んであげる」
 「ユキちゃん、ドレス着せてあげる
  (私のワンピースを赤子に着せるとドレスに見えました)」
 「ユキちゃん、おうた歌ってあげる」
 「ユキちゃん、寝ちゃった?
  ねぇ、ねぇねぇねぇねぇ(ほっぺを指でツンツン)」

 

当時の写真を見ると、私はユキの乗った乳母車を押して、うまく押せないため蛇行して溝にはまったり、まだ首も座っていない妹をおんぶ紐でおんぶして、赤子の重みで後ろにひっくり返らないように壁に手を置いてソロソロ歩いています。写真の私は口を真一文字に結んだ真剣な表情で、妹は諦めと度胸が混じった微笑みを浮かべています。こんなに危ない目にあって泣かない妹も大したもんだし、首が座る前の赤子を3才児が背負っていても怒らない母も大したもんです。こんな写真から、遊んでもらっていたのは妹ではなく私だった事が分かります。

 

ユキが1才の誕生日を迎える時、4才の私は全財産を入れたポシェットを首にさげて、一人で本屋さんへ向かいました。誕生日プレゼントを買うためです。1才では文字は読めませんが、私は本が好きだったし、私が読んであげればいいと思ったのです。妹の喜ぶ顔を想像すると、一人で本屋さんに行くことに不安はなく、むしろ期待で胸いっぱいでした。さて本屋さんに着いて、それまで絵本を買ってもらうことはあっても自分で買うことはなかったので知らなかったのですが、絵本は意外と高かったです。1000円台は安い方で、2000円や3000円なんて本も沢山ありました。

 

困った…。ポシェットの数百円では買えません。「私にも買える絵本はないのか?」と、しかめっつらで店内をさまよいます。―と、レジの前のかごに、8cm四方くらいのペーパーブック絵本を見つけました。子ども心に安そうと思いました。“ムスティ”という一冊を選んで、レジにポシェットの中身をぶちまけて、「足りますか?」と聞いたら、あぁよかった、足りました。「妹にあげるの」と主張して、かわいい紙袋に包んでもらいました。
このように入手された“ムスティ”は、妹が「読んで」とせがむより、私のほうから「読んであげる」と頼まれてもいないのに読み聞かせをすることの方が多かったので、むしろ私の玩具のようでしたが、妹もそれなりに喜んでくれている様子でした。

 

6年後。10才になった私は、妹の1才の誕生日に絵本をあげた件を作文に書いて、何かの選考会で選ばれて、作文と顔写真が新聞に載りました。その新聞を妹に読みあげると、妹は「私への愛情に満ちている。また、プレゼントに本を選ぶあたりに、この家庭の知的教育も垣間見えて、教育関係者にはウケるだろう。しかし、ウケをねらった嫌味な文章ではなく、子どもらしい素直な文体だ。すばらしい」というような感想をスラスラ述べました。この時まだ妹は7才なので、ここに書いたとおりの言葉で話してはいなかったと思いますが、主旨としてはこのような事を言いました。
この時10才の私はしみじみと、「ユキ大きくなったなぁ」と7才になった妹の成長を感じたのを覚えています。

 

29才の妹は今でも、この時の絵本を大事に持ってくれています。時々、「もう絶版だから今売ったら高く売れるかもね」とドキッとする事も言いますが。

 

この記事を
書いた人

おすすめ商品

歯ブラシ
シャカシャカ トルネ

歯磨きが面倒くさい人は「コレならラクじゃ~ん」と驚きます。 オーラルケアにこだわる人は「大きいヘッドはダメだと思っていたのに、今までで1番イイ~」と驚きます。これ本当にスゴイですよ。