2012年9月号Vol.3
こんにちは!サクライです。ただいま歯ブラシセールの真っ最中です。
というわけで今回は、歯ブラシにまつわる小噺を一つ…。
私が歯ブラシの商品担当になったのは今から1年ちょっと前、社会人になって初めての夏でした。
「製造方法を知ろう」「品質が良いものを提供しよう」「たくさん売ろう」―まぁ新人の私が考える事はこの程度です。
しかし、歯ブラシが私に教えてくれる事は、歯ブラシの事だけではありません。ついこの前まで学生だった私に、歯ブラシは仕事のなんたるかを教えてくれます。さて、歯ブラシが教えてくれる事って…?
毛先の加工方法は、大人用・子ども用でも違うし、カリエス対策・歯周病対策でも違います。
顕微鏡で見なければわからないミクロな世界ですが、いろんな技が詰まっています。
毛はTORAY(東レ・モノフィラメント社)製で、歯周病対策の毛先を作る加工技術の詳細は、メーカーさんから私も教えてもらえません。「これは社外秘です。P.D.R.さんと言えども、お見せできません」
う~ん、歯ブラシの毛先に秘伝の術が施されているなんて、いったい誰が想像しましょうか。
歯ブラシの柄の生産も大変です。意外かもしれませんが(私はビックリしました)、柄の色を変えるだけでも一苦労なんです。「アソートを4色から6色にしてほしい」とP.D.R.はケロッと頼みましたが、それに対応するためにメーカーさんはバキバキ骨を折っています。色を変える時、別の色がついた金型をきれいに拭き取り、乾燥させなければいけません。これに時間がかかるんです。
歯ブラシの生産方法について語る時、メーカーのおっちゃん達はとても熱くなります。「良いモノを!」という熱意がメラメラしているのを感じます。もちろんメーカー側も商売ですが、面とむかって話していると、「商売人というより、職人さんだなぁ」とよく思います。
P.D.R.は通販なので、主な営業方法は「紙面」です(カタログ、チラシ、FAXなど)。この「紙面」を作る時、お客様の声がとても参考になります。お客様が紙面に登場してくださった事もあります。この方々がいなければ、商品にこだわっていることを楽しく紙面で伝えられません。ただ商品と価格を並べるだけになってしまうでしょう。そして「こんな雰囲気の紙面にしたい」という私の要望を、実際に形にしてくれるのはデザイナーさんやカメラマンさん、それに印刷業者さんです。
さて、歯ブラシが出来上がって、紙面も完成して、チラシが皆様のもとへ届いてから ― ご注文は電話・FAX・インターネットで承っています。電話やFAXの場合、コールセンターのスタッフが1つ1つの商品番号をパソコンに入力し、そのデータが物流センター(商品が保管されている倉庫です)へ飛びます。物流センターではそこのスタッフが手作業で商品を梱包し、運送業者の兄さんに託します。こうして、ようやく歯ブラシがお客様のもとに届きます。
到着後、ドクターや衛生士さんを通して、歯ブラシはやっと皆様や患者さんの歯を磨くことができるのです。そこで認めていただければ、再注文に繋がって、このサイクルがまた1から始まるわけです。
つまるところ、歯ブラシが私に教えてくれるのは…『仕事は一人ではできないよ』という事。
歯ブラシから、「ぼく1本を作って売るのに、こんなにも多くの人が関わっているんだよ」という話を聞いていると、「あんた72円でいいのかい!」とつっこみたくなります(笑)。
関わっている人数は、原料として石油が地下から出てきてペリッと袋を破られるまでに数百人、私が直接会ってる人と、その人達から聞いている人だけで数十人です。
でもこの72円から、関わった人みんなのお給料がでているわけで…経済の仕組みってすごいですね。
とにかく、私はひとりで歯ブラシ1本作れないし、歯ブラシ1本売れません。
いったい歯ブラシ担当として何をしているのか?…う~ん、未だ模索中です。