82歳のiPhoneアプリ開発者
今回はシステムの長谷川が感動した話をお届けします。
今回の話題はアップルが毎年開催している「WWDC」について。
「WWDC」とはWorldwide Developers Conference(ワールドワイド デベロッパーズ カンファレンス)のことでアップルが毎年開催している最大のイベントです。最新のiOSやiPhoneなどの新しい製品の発表もある超有名なイベントで、スティーブ・ジョブズがiPhoneを片手に発表している姿を見たことがある人も多いと思います。
その「WWDC2017」で、82歳の日本人、若宮正子さんがiPhoneアプリの制作を手がける現役最高齢プログラマーとして世界に紹介されました。
若宮さんがパソコンを始めたのは、仕事を定年退職してからでした。
Windows 95が登場する前で、パソコンを使いこなすのは難しい時代。
最初はパソコンをインターネットに接続するだけで3ヶ月かかったというほどの機械音痴だった若宮さんですが、書籍を買って独学で使い方をマスターし、パソコン通信のチャットを利用して、友だちと大好きなおしゃべりを楽しんだそうです。その後、パソコンの魅力に取りつかれた若宮さんは、独自のアイデアでパソコンを楽しく活用することに多くの時間を割くようになり、「パソコンを使った手芸」と呼ぶExcelアートを始めました。
Excelのセルを色で塗りつぶしたり罫線の配置を工夫したりすることで、日本の伝統的な文様をはじめ美しいグラフィックを描くという趣味に取りつかれた若宮さん。
ある日、「シニアが楽しめるアプリがなかったから」とシニアが楽しめるスマホアプリがほしいと思い、東日本大震災のボランティア活動で知り合った、スマホアプリの開発やプログラミング教育を手がける(株)テセラクト代表の小泉勝志郎氏に開発を依頼しました。
ところが、小泉さんから「僕がプログラムを書くのはたやすいが、たとえ僕が作っても注目はされない。マーちゃん(若宮さん)がアプリを作れば絶対に話題になる!」と、若宮さん自身がプログラミングして開発することを薦めたそうです。コンピューターは好きだったがプログラミングの経験はまったくなかった若宮さんが開発をスタートしたのは2016年の夏。
2017年2月下旬にアプリは完成し、AppStoreに登録しました。
現在、若宮さんは自宅でパソコン教室を開いており、同世代のシニアの友だちにパソコンやスマホの楽しみ方を教えたり、IT関連の話題を取り上げて解説したりしています。悪意のあるサイトへ誘導する詐欺メールの見分け方や、偽のウイルスソフトの判別方法、世間を騒がせたランサムウエア「WannaCrypt」の概要など、高度な内容も分かりやすく解説でき、必要な資料もすべて若宮さんが作成しているそう。
若宮さんは、
インターネットやパソコンのすばらしさについてこう語っています。
「私は翼をもらったのです。その翼はパソコンを使う前には知らなかったような広い世界へ私を連れて行ってくれたんです。」
これを聞いて私は素晴らしいと純粋に感動しました。
男女、人種、年齢など関係なく、すべての人が何かを生み出すことができるのがネットの世界なんだと改めて実感しました。若宮さんがアプリを開発したのは、名声やお金のためでもなく、向上心のためでさえありません。
彼女を突き動かすのは、単純に「楽しいものがほしい。自分で作っちゃおう!」という「モノづくりの楽しさ」がすべてなのです。私が尊敬してやまない、「スティーブ・ウォズニアック」も同じように「モノづくりの楽しさ」を極めた人だと思います。
この話を聞いて、
改めて「モノづくりの楽しさ」を常に考えていようと思った話でした。